永遠に18歳〜6/19(日)佐野元春30周年アニバーサリーツアーFINAL〜

0
    110619_1927~0001.jpg 
    1987年9月14日横浜スタジアム。一塁側スタンドの奥深くにボクはいた。生まれて初めてロックコンサート、いや、コンサートというもの自体を体感する事実に胸を膨らませるボクがいた。その時のボクは18歳。そして目の前に米粒大で現れた赤いギターのロックンロールスター佐野元春が見せた奇跡のようなステージをボクは生涯忘れる事はないだろう。彼が歌った【タフでクールでそしてヒューマンタッチ】を体現して見せてくれた目くるめくようなロックンロールショウを。
     それから24年近く時は流れ、2011年6月19日東京国際フォーラム・ホールAの1階席の後方にボクはいた。42歳になり、あの頃よりほんの少し稼ぐようになり、ほんの少し心にゆとりも持ち、ほんの少しだけ遥か前方に人生のゴールラインが見えかかってきたボクがいた。ただ、あの頃と決定的に違うのは、あの頃にはいなかった、生涯をかけて愛し続けると心に誓った特別な人が隣にいるということだ。ボクが愛するその人は誰よりも強く・誰よりも脆く・誰よりも冷たく・そして誰よりも温かい。ボクの愛するその人をボクの元に運んでくれた(と信じている)のも佐野元春なんだ。デビューして30年、万感の思いはあるだろう。でも佐野さん、こっちにだってあなたへの溢れんばかりの感謝の思いがあるんだ。
    あなたは折に触れてこういう。「僕は永遠に18歳です。」ボクは、ボク自身はあまりこういう感覚は持ちたいとは思わない。(永遠に中2とは言ってるけど...)
    しかし佐野さん、あなたとこうやって対峙するボクはいつだって18歳のあの日のボクになってしまうんだ。

    開演予定時刻から10分強遅れた頃、THE HOBOKING BANDによるインストナンバーで幕を開けたこの日のステージ、人によっては数年前テレビ東京で放送されたみうらじゅんの番組「シンボルず」を思い出した人もいるだろう。少なくともボクは「確珍はーーん!」と心の中で叫んだ。
    その後白いシャツに黒いベストという最近のイメージの佐野元春があの時と同じ赤いギターを携え現れた。彼の代名詞であるライオンのヴィジュアルは、時を重ね研ぎ澄まされ、美しい銀の鬣を雄雄しく振り回すシルヴァーライオンに成長していた。表情こそ見えないものの、満面の笑みを浮かべていることくらいわかる。その自信に満ち溢れた姿にみとれているうちに1曲目「君をさがしている」が始まった。【でも今夜はいつもの夜とは違う 君に会えそうな気がするのさ】 彼の音楽を象徴する重要なキーワードである【君】、この夜はまさに僕の頭の中にこれまで出会った色んな【君】が駆け巡った。終演後、会えそうな気がしていた何人かの【君】に会えたこともこの夜の喜びだった。
    だが2曲目「ハッピーマン」事件は起こった。この曲のワンコーラス目にある、日本のロックンロール史上最も重要なセンテンスのひとつであると信じている【アスピリン片手のジェットマシーン】をあろうことか2番の【カシミアのマフラーにイタリアンシャツ】に間違えたのである。このフレーズはその後も2度くらい繰り返されるので、これじゃこの主人公の男のイメージが単なるイタリア被れの陽気なバカになってしまうではないか!だがそんなちょっと残念な気持ちは次の「トゥナイト」が吹き飛ばしてくれた。アルバム『VISITORS』からの1stシングルとして最初に届けられたこの曲は、あまりライヴで披露されることはなく、僕自身、7,8年前京都に住んでる頃に大阪まで観に行ったステージで観たきりだった。その日も、あの9.11へのレクイエム的意味合いの強いスローアレンジが為されていたので、本来のポップナンバーとしての機能を果たしたのを観るのは初めてだった。ボクはこの曲の中にある【君は悩ましげなshootingstar/地下鉄の中のrainbow】というフレーズのハーモニーが昔から大好きだった。この時もその部分だけ自分で勝手にハモッて歌い、目頭を熱くした。
    その後もアルバム『VISITORS』から「カム・シャイニング」「コンプリケーション・シェイクダウン」という重低音命・おまえの腰はもらった的なナンバーが続き、「あたしはとにかく踊りたい人」という我が妻を喜ばせた。ただ、ただボクはライヴ版の「カム・シャイニング」には以前から1つだけ不満があった。この曲の肝である【BEAT GOES ON!】というフレーズ。アルバムでのこのフレーズのリズムを愛して止まないボクはライヴでの発せられ方、そのリズムを変えていることが不満なんだ。今回もそれが解消される事はなかった。まあ、多くの人にとってはホントに取るに足らないことなのでいいのだが...。

    今回のツアーファイナル、東京公演の2日間は本来は3月12日と元春の誕生日である13日に開催される予定で、ボクはアニヴァーサリーの締め・そして彼のバースデーを祝うという2重の感動を期待したのだが、あの3月11日の出来事を受けてこの6月18・19日に順延されたわけだ。重要な日をずらさざるを得なかった元春の落胆に比べたらボクの落胆など屁みたいなものだ。そしてあの日から3ヶ月間でこの国は色んなことがあった。今回のステージでもそのことを頭に浮かべずにはいられない瞬間はいくつかあった。99ブルース」の【得意げな顔したこの国のリーダー/シナリオのチェックに忙しい/ユーモアもない/真実もない/フェイクしたスマイルはとても寂しい/フェイクしたスタイルはとても寂しい】これなどはまさにこの国の現状にあてはまる。シナリオのどの辺をチェックしているのかは知らないけど...。

    しかし、そんなことより「欲望」である。凄かった。とにかく凄かった。この曲をやりたいが為にわざわざexハートランドのギタリスト長田進(若干TKO木下似)を呼び寄せたのではないかと勘繰ってしまうほどの熱量だった。そして93年にタイムスリップしたかと思うような元春のヴォーカルの力強さ・瑞々しさよ!いや、あの忸怩たる時期を・長いトンネルを潜り抜けビルドアップされたブランニューな彼の咆哮は、そのショットガンはボクの心の臓を確かに撃ち抜いた。それが証拠に【何もかもが手に届かない】の♪なぁーにもかーもが...のシャウトで泣いてしまった。彼の喉の具合の悪さは運悪く20周年アニヴァーサリーの頃に顕著で、当時ボクは誰よりもロックンロールしたい彼が100%でロックできないその想像を絶するヘビーネスを勝手に抱き胸を傷めたものだった。それを乗り越えさらに強靭なライオンヴォイスを手に入れた歓びをこの曲と、セルフカヴァー集『月と専制君主』からの数曲のナンバーを挟んで続けざまにドロップされたロック爆弾「ロックンロール・ナイト」「約束の橋」「ヤング・フォーエヴァー」でもう勘弁して下さいってほど感じ取った。特に「ヤング・フォーエヴァー」は長田・佐橋夢のタッグによるツインギターの妙も相まって、我が妻などはじめてこの曲で泣いたと言わしめるかっこよさ。明らかに、何度か訪れたこの夜の最大沸点のひとつだろう。

    その後「ニューエイジ」「新しい航海」という鉄板を経て彼のMC
    僕はときどき思うんです。どんなにいい曲を書いても、それをみなさんが見つけてくれなかったら、そんな曲はなんでもない。次にやる曲は80年代の前半に、半年かかって書きました。どうしても、曲の一番いいところに言葉が降りてこなくて...
    実は2枚目のアルバム『Heart Beat』に入れようとしていたんだけど間に合わなくて、その次のシングルになりました。みなさんがこの曲を見つけてくれて、僕は心から嬉しく思います。やがてこの曲は、僕が書いた曲なんだけど、皆さんの曲になりました...
    …でも待って!  やっぱり僕の曲だよ!
    やっぱり僕の曲だよ!!
    大事な事だから2回言って「サムデイ」 が届けられた 。そんなにあらためて言わずとも、あれをボクらの曲だと思ったことなんかびた一文ありません。それどころかあなたの生み出したすべてのものはあなたのものでなければ何の意味も持たないとすら思っています。
    ただ一言だけ言わせてください。この後また鉄板のロックンロール「悲しきRADIO」メドレーで本編を終え、アンコールで戻ってきたあなたはすべての始まりである最強のロックンロールナンバー「アンジェリーナ」を披露し、ツアーを支えたスタッフを労い

    「音楽がなくても生きていけるけど、音楽があったおかげで、見える景色が広がりました。若葉の頃から始めた音楽で、得たり、なくしたりをくり返しながら、出会った人々すべてに支えられてここまでやって来れました。僕の作った音楽を愛してくれて、本当にありがとう。僕の中にある音楽へのありったけの情熱を捧げます。これからもよろしく。」
    とこれまた日本のロック史上に残るであろう名言を紙にまで書いてボクを泣かし、奇跡のようなこの上ない幸福感・充実感を残してあっさり去っていきましたよね。我が妻が若干怒ってました。「アンコールが1曲だけってどーゆーこと!?」
    いや、ボクはいいんですよあれで。いいんですけど妻がね...いや、忘れてください。

    最後に、あの夜元春を支えたバンドの中でフォーン担当の山本・佐々木両氏の、彼らの後ろでキーボードをひいていたkyOn氏がフィーチャーされるたんびに舞台袖にハケていくサマが、そそくさとではなく比較的のんびりと、曲のリズムに合わせるでもなく悠々とハケていくそのサマが可笑しく可愛かったことと、その両氏の奏でる「ヤングブラッズ」のアウトロの素晴らしさにも心の琴線をレロレロ揺さぶられたことを付け加えておく。

    以上、持ち前の支離滅裂さで羅列させてもらったが、24年前に見た【タフでクールでそしてヒューマンタッチ】が、齢55にして更に強靭に更に瑞々しく感じられるなどということは何度も言うが奇跡だ。
    そんな奇跡を見せてくれたシルヴァーライオン佐野元春、魂は18歳佐野元春に最大級の敬意を表します。あなたに会う時だけは永遠に18歳の男より。

    P.S.
    この拙い駄文を、長崎に住むまだ見ぬ友人に捧げます。
    24年前のあの日、同じ場所で別の角度から奇跡を見た友人に。

    スポンサーサイト

    0
      • 2017.03.28 Tuesday
      • -
      • 15:41
      • -
      • -
      • -
      • by スポンサードリンク

      関連する記事
      コメント
      すんばらしい!
      音楽レビューで感動したのは久しぶりです。
      以前雑誌でビジターズを評し
      「佐野元春は佐野元春をブッ壊した。どかーん!」
      というのがあって、スゲぇレビューだな、と感嘆したことがあるのですが、今回のつるたかさんのレビューも素晴らしい!
      呉さん、とても嬉しいです!
      いつもその文章力の高さを尊敬している方に褒めていただくと励みになります!!
      しかしライヴ後はいつも真っ白になって、記憶が消えるオレでもあの日のステージだけは別でした。一生記憶に残る夜を作ってくれた佐野さんにはホント感謝してますよ。
      そして「佐野元春が佐野元春を壊した。どっかーん。」凄いですね。そんな端的且つ的確に表現できるようになりたいもんです(笑)、いやホントに。
      • つるたか
      • 2011/06/22 10:12 PM
      いまさらのコメント付ですが、昨日の放送に観て、たかしさんの読んで、もうダメですね。
      涙腺が緩みっぱなし。。

      モトカツに掲載させてください。
      復帰、追加作業は冬ぐらいになりそうですが。。

      本当にありがとうございました!

      • いけうちかつのり
      • 2011/08/25 3:22 PM
      マジですか(笑)。恥ずかしいーーっ!(嵐のケダモノツアーで大迷惑を歌う時の奥田民生風に)…いやいや、ありがとうございます!光栄です。映像も観たし、冊子もあるし、もう実際行ったんだと自分に暗示をかけてしまいましょう(笑)。
      • つるたか
      • 2011/08/26 2:31 AM
      コメントする








         
      この記事のトラックバックURL
      トラックバック

      PR

      calendar

      S M T W T F S
         1234
      567891011
      12131415161718
      19202122232425
      262728293031 
      << March 2017 >>

      なんでも訊いてみたまえ

      「もっと映画を観なさい」(淀川長治・談)

      チミはなぜモトハルを聴かーん!?

      selected entries

      categories

      archives

      recent comment

      • Blowin' in the wind...
        たかし
      • 冷静に取り乱す、ひとり相撲の大横綱
        つるたか
      • 冷静に取り乱す、ひとり相撲の大横綱
        レイン
      • 全身青春男
        つるたか
      • 全身青春男
        呉エイジ
      • 隠密プレイ
        つるたか
      • 隠密プレイ
        呉エイジ
      • 男のフィギュア棚 童貞ドリームの体現者として生きる
        つるたか
      • 男のフィギュア棚 童貞ドリームの体現者として生きる
        呉エイジ
      • 永遠に18歳〜6/19(日)佐野元春30周年アニバーサリーツアーFINAL〜
        つるたか

      recent trackback

      recommend

      世界の名自転車100
      世界の名自転車100 (JUGEMレビュー »)
      ザヒド・サルダール
      見てるだけで楽しいバカ自転車図鑑でもある。

      recommend

      大脱出 [DVD]
      大脱出 [DVD] (JUGEMレビュー »)

      ゴジラ対ガメラみたいな夢の競演作。高1のオレに教えてあげたい。

      recommend

      The Next Day
      The Next Day (JUGEMレビュー »)
      David Bowie
      10年越しに届けられた奇跡の名作。捨て曲一切なし。

      recommend

      どうして人はキスをしたくなるんだろう?
      どうして人はキスをしたくなるんだろう? (JUGEMレビュー »)
      みうらじゅん,宮藤 官九郎
      世間的には「ゆるキャラ」対「あまちゃん」。オレ的にはサブカルマスターと同世代パダワンの興味深いバカトーク。

      recommend

      links

      profile

      書いた記事数:652 最後に更新した日:2017/03/28

      search this site.

      others

      mobile

      qrcode

      powered

      無料ブログ作成サービス JUGEM