ゴジラが教えてくれたこと

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    「ゴジラ」を観てきた。「ダークナイト」シリーズや「パシフィック・リム」を作った(男子が喜ぶものを作る正しい映画会社)レジェンダリーピクチャーズ社製作の所謂レジェゴジと呼ばれているやつだ。

     
    このバージョンもそうだけど、予告編を観るまでは全然期待してなかったんだハリウッドゴジラなんか。
    ちゃんっちゃらおかしくて、’98年のあの忌まわしいオオイグアナを観てるからさこちとら。
    でも少しずつ公開される予告編を観ていると、なっかなか全体像の出てこないゴジラの得体のしれない怖さとか
    やっと見えた勇ましい背ビレの感じとか(バスの窓ガラスに映りこむ演出が見事)、波の押し寄せるところの
    「来るぞ来るぞ」感のうまさに、ひょっとしたらいいんじゃねこれ?と思い始め、
    決定打になったのが渡辺謙のセリフ「We called him.....ゴジラ。」。ガッズィーラじゃなくてちゃんと日本語読みの
    イントネーションで発せられたことに鳥肌が立った。ハイキターっ!キチャッタよこれ。
    これはとりも直さず東宝ゴジラへのリスペクトのもとに作られていることの何よりの証明だし、そもそもナベケンの演じている科学者の名前が芹沢猪四郎だもの。芹沢博士といえばファンなら誰もが知る第一作でゴジラと心中した平田昭彦扮する科学者の名字だし、猪四郎はその第一作を撮った本多猪四郎監督から取られていることは明らか。
    ただそういった第一作から連想される内容を気持ちいいぐらいに嬉しく裏切ってくれたんだ、この今回のレジェゴジは...。

    その前に、ゴジラシリーズに関するオレの個人的な思い入れの下地を語っておこう。
    まず、今40代中盤男子にとってゴジラはウルトラマンや仮面ライダーと並ぶ特別な存在のはずだ。
    オレもご多分に漏れずその口で、この3大ヒーローに熱くなる子供だった。
    家に帰ればテレビにかじりついてスペシウム光線やアイスラッガーに狂喜、ライダーキックやライダー返し(がえしって...)に乱舞したものだ。ブラウン管を縦横無尽のヒーローに憧れまくった。
    ただゴジラとのファーストインプレッションは強烈だった。
    うちは両親共働き....いや、親父は殆ど働いておらず、母親は働きっぱなしで幼い頃は他の家のようにかまってもらえなかった。
    そんな我が子に申し訳なく思ってくれたのか、地元にあった小さな映画館にはよく連れて行ってもらった。
    ずーっと働きづめで疲れていたのだろう、行くのは決まって土曜日の最終回だった。晩御飯を食べさせて映画から帰ったら翌日休みだからゆっくり寝ていられるということだろう。
    子供相手のアニメなんかを選んで連れていってくれたから東映まんがまつりのマジンガーZ対デビルマンあたりをよく憶えているが、とにかく初めて見た怪獣映画が強烈だった。
    「地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン」
    何を憶えているのかというと、時間を間違えたのかどうかは忘れたが、映画館の重い扉を開けた時
    既に映画は始まっており、もう怪獣同士の激しい戦いの真っ最中だったのである。
    真っ暗な場内でスクリーンの大画面狭しと暴れまわる怪獣たちの迫力は子供のオレにはまあ強烈だった。
    特にこの作品から新登場のヒール怪獣ガイガンの鉤型の爪・腹に仕込んだ電ノコ(身も蓋もない言い方すんなよ)の凶悪さには戦慄した。盟友アンギラスを従え劣勢を跳ね返すべく勇敢に戦うゴジラに声援を送ったものだ。
    途中から見たからストーリーなどびた一文わからなかったがとにかく怪獣たちの戦う姿、
    特にウルトラマンのスペシウム光線、仮面ライダーのライダーキックに相当するゴジラの熱線放射には痺れた。
    所謂名画座みたいに封切りから随分経った作品ばかりを扱う映画館だったので、以降「モスラ対ゴジラ」「三大怪獣 地球最大の決戦」等60年代の作品にも連れて行ってもらいますますゴジラに心酔していった。母親も好みがわかっていたのだろう、ゴジラ映画か掛かると必ず連れて行ってくれた。
    そう、オレにとってゴジラは映画の原風景であり、デカくなければ、動かなければ映画ではないと教え、アクション・バカ一辺倒のボンクラ男子にしてしまった張本人なのである。

    何の根拠もなく守るべき理由もないのに、人間の、子供の味方だと思っていたゴジラが、実は神をも恐れぬ人間の傲慢が生んだ悲しく恐ろしい化け物だったと知ったのは中学生の頃だったか。もうその頃には怪獣熱も醒めかかっていたから、逆にその方が理にかなってる気がした。ただ、怪獣の王で、ウルトラ怪獣などよりステージの高い存在だと思っていたゴジラがなんか結局ゴモラやジラースなんかと同じではないかとちょっとショックではあった。

    その人間にとっての脅威という原点に立ち返った’84年版「ゴジラ」を観たのは高校1年の頃。その年の正月映画は「ゴーストバスターズ」「グレムリン」との3G対決と謳われたものだが蓋を開けてみればゴーストとギズモのハリウッドパワーを見せつけられる結果に終わってしまった...。東京のビル群の高層化に併せて30メートルほど設定が大きくなったものの、有楽町マリオンもやや見上げる角度になってしまったゴジラではその恐怖感は弱まってしまうよ。そして渡り鳥の帰巣本能を利用するという退治方法の強引さも、ラストに流れる外人女性コーラスのゴジラソングもそれは寒々しいものであった。

    それから5年後、「ゴジラVSビオランテ」という所謂対決ものが久しぶりに公開され、観に行った時は
    そうそう、こうやって戦ってたんだよなあゴジラ...と感慨に浸ったものだがそこから始まる平成シリーズは
    キングギドラを復活させたりモスラを復活させたり挙句の果てにはメカゴジラまでと焼き直し感がどうもダメで再び遠ざかってしまった。元々さほど興味のないドラマ部分に出てくる役者もお茶の間レベルの小物ばかりだから、尚更映画として観る意味の希薄さを感じずにはいられなかった。そう、オレにとってゴジラは映画で映画はゴジラなんだから。

    あと、平成ゴジラはいろんなものを背負わされてる悲壮感が強く感じられたんだ。
    なんか【人類にとって脅威でなければいけない】【だから当然強くて怖くなくちゃならない】【でも愛される部分もなくちゃならない】【日本の特撮文化の象徴でなくてはならない】【でもそれなりにテクノロジーは使って驚かせなくちゃならない】etc。

    いやいやそんなこと全部ボクに頼まれたら身が持ちませんわ...とばかりに’95年「ゴジラVSデストロイア」で体内の核がメルトダウンという壮絶な最期を迎えたゴジラだが、ここぞとばかりにハリウッドが製作したのが前述の’98年版「GODZILLA」である。
    新世代のギラーミンことローランド・エメリッヒがバカの極致映画「インデペンデンス・デイ」の勢いそのままにゴジラ映画製作!のニュースを聴いた時は若干期待したんだ。ひょっとしたらオレが好きだった「ゴジラ対ガイガン」や「ゴジラ対メガロ」あたりのバカさが帰ってくるかも...しかし...できあがったものは...単なるイグアナの化け物、マンハッタンで大暴れ、もミサイル2発であえなく死亡、米軍万歳の巻。
    オレはゴジラのヴィジュアルが全然別物に変えられたことは別にいい。ただあの終わり方がいただけない。もしあの化け物を54年版の初代ゴジラになぞらえたのであれば、最後は当然志村喬扮する山中教授が警告したような問題提起を想起させるような暗澹たるものにしなければならないのである。
    オレは第一作の名場面は松坂屋の下で死を待つ親子の姿であり乙女の祈りであると思ってるくらいだから、あのラストに腹が立って腹が立って仕方がなかった。
    しかし、後に聞いた話によるとエメリッヒは本当は「原子力怪獣現る」のリメイクをやるつもりだったのを大人の事情でゴジラに変えられたらしく、仕方ないからゴジラとは名乗らせるけど作りたかったのは「原子力怪獣現る」だからね、文句言われても困るよ、とのことのようだ。そりゃ思い入れがないからああなるさ。だからあれはガッズィーラであってゴジラではないと思って観ればなかなかのモンスター映画だとは思う。CGはよくできてるもの。

    そこであんなもの見せられて本場の我が国が黙ってられるか!と意気込んで作られたのが「ゴジラ2000-ミレニアム-」だ。
    これがまあ、前述した平成ゴジラの悲壮感のおかげでどっちつかずの微妙な作品に仕上がっている(あくまで個人的感想)。テクノロジーの活用とばかりに繰り出したCGはちゃちさが話のスケールの大きさと反比例していてそれは寒かった。ラストの後の東京はあれ完全に死んでるでしょって感じの投げっぱなしだし。その後の日本製作の現時点での最終作「ゴジラFINAL WARS」にいたるまでオレの思いが払拭されることはなく、どうすればいいのかを考えてもいた。

    しかし今回のレジェゴジにその答えはあった。やっぱり中途半端なこだわりではだめなのだ。
    やるなら度を越さなきゃ意味がないのだ。
    今回のゴジラの度を越した焦らし方、
    焦らして焦らして現れたゴジラの神々しいばかりの度を越したデカさ、
    そのボディーデザインの度を越した緻密さ(海中を泳いで移動するんだからということで鰓までついてる!)、
    敵の新怪獣ムートーの度を越したキモさ、
    総じて度を越してかっこいい「怪獣映画」になっているのである。
    町山智浩さんをはじめ各方面から絶賛された
    ハワイに最初に出現したゴジラを足元から上にパーンしたカメラが遂にその顔をフォーカスした直後の
    あの咆哮には涙が溢れた。

    その後ムートーを追ってサンフランシスコ沿岸に現れたゴジラが金門橋で立ち往生するバスを守るかのような暴れ方をするその姿に、オレが女だったらこういう男に抱かれたくなるんだろうなとも感じた。
    そしてクライマックス、決戦場と化した夜のサンフランシスコ市街で遂に放たれる例のアレ!!

    口開けえっ!開けたらんかコラッ!!うおらああああぁっ!!!!
    観た人はみな共感してくれるであろう留めの一発場面かっこよさの極致を見せてくれたかと思ったら
    いきなりの電池切れでスヤスヤかわいさの極致。
    そして最後は椿三十郎のような英雄っぷりを見せる後姿。
    もう千両役者としか言いようがない、まさにスターを観た心地だった。
    ただ隣で観ていた初老夫婦の旦那の方!おまえはなんだおまえは!!
    中盤に差し掛かるまで「まだ出てこないの?つまんねえなあ、なんだよこれ。」とかボヤキやがって...。
    若いヤツが言うならわかるんだ、でも明らかに昭和ゴジラの、第一作を何度も観てるような世代の男が言うかそれ?
    で、サンフランシスコ編はもう完全にオレサンフランシスコの町にいたからわかんなかったけど、映画観終わって席立つ時に隣で
    旦那「こんなつまんないとは思わなかったよ、全然戦わないじゃん。」
    奥様「何言ってんの、一番凄いところでずーっと寝てたじゃない...。」
    マジか、こいつマジか...。奥様の方がずっと男子であった。
    そして完全に昭和ボンクラ男子と化したオレは
    TS3Y1592.jpg
    当然売店でソフビをゲット。
    TS3Y1591.jpg
    映画秘宝のボンクラ同志たちの熱いレビューに唸り、膝を打ち、
    会社のボンクラ同志と熱くゴジラ論を闘わせる日々なのである。

    ゴジラが教えてくれたこと、
    やはり今も昔も
    映画はデカいヤツが思いっきり動いてなきゃダメだよ、
    ってこと。





     

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